ユーモアもまじえつつ語ってくれるけれど、やはり話芸そのものの明晰さという点では、間に挟まれた講談に一日の長があるな、と思った。
浪曲はうなるので時に言葉が聞き取れない箇所がある。しかしそれでも、語り物でありながらも全体的に言葉遣いが、現代の観客からすれば韻文的で美しくも感じられるということがよく伝わって来た。
「夢がうつつか、うつつが夢か」などの77リズムの短い言い回しに、民間信仰的な思想を読み取ることもできるだろう。
その日聞いた中で特に面白かったのは、鳳舞衣子さんの「三味線やくざ」という演目だった。
聴いているとなぜかアウトローの気持ちがよくわかる気がする。
木馬亭の客席はそれなりに盛況だった。
演者の玉川太福さんによると、十数年前は客もまばらだったという。
客が増えたということは、アウトローに共感する人がその間に増えたということかもしれないと思った。