道化語録

文学を学ぶ学生ですが主に文学以外のことを書きます

展覧会の絵

博物館や美術館で、特に大きな展覧会をやっている時は人でごった返している。

 

私も含めて多くの人にとってはその会場でしか見られないものだから、行列に耐えても見たいという気持ちはよくわかる。

 

だが、ふと我に帰ると、なんでこう、展示品を皆でありがたがるかのように、初詣のようにして並ぶのだろうか、という疑問も湧く。

(博物館に初詣という企画もそういえばありますね)

 

展示されるものの分野にもよるけれど、そこに品が展示されている、という状態こそが不自然な気もする。

 

たとえば美術品にしても特定の殿様のために作られたものが城から運び出された状態であるのとか、実用的な日用品として製作されたものに至っては展示されて全く使われないとかいうのは、品そのものの文脈からの孤絶や疎外であり、作品の生態系からの剥奪とも言える。

 

だが、その不自然な状態こそ、Natur(自然)の対極にある概念としてのKunst (芸術)の体現なのかしれない。

何もドイツ語を使わなくても、アーティフィシャル(人工的)という単語に既にアートが含まれているけれど。

 

そう考えると、作品はある種不自然な状態に置かれて初めて、芸術品として扱われ、美や何かしらの価値観の規範として存立しうる、だから人は展覧会の絵に参拝に行くのかもしれないと思う。