三島由紀夫の戯曲『サド侯爵夫人』の公演があるから見てきた。
サラダボールという四国の劇団についてはよく知らなかった。
けれど、あまり貴族と思えない雰囲気の日常的な会話で1幕が始まった時は少々暗澹とした気持ちになった。
が、その導入も激しいクライマックスへの布石だったのだと思う。2幕と3幕と見続けて最後は震えが止まらなかった。
賛否両論分かれるであろう舞台装置に関しても、個人的には好感が持てた。
牢獄の中のサドがエクリチュールを通して読者(サド侯爵夫人ルネ)を悪の結晶の中に閉じ込めてしまう様子が可視化されていたので。
観客の顔が映り込んでしまうのも、見る見られるの革命的な主客転倒が起こるというか、サドらしい二義性を感じさせて興味深い。
1960年代、若者の反乱の季節ならではの作品であると思うが、同時に文学史演劇史上の金字塔とも言える名作戯曲だと思う。